共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪寒冷地における局所植物多様性の解析
研究代表者/所属 信州大学理学部生物科学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 佐藤利幸

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

01

原 登志彦  北大低温研  教授 
02 隅田明洋  北大低温研  助教授 
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研究目的 日本の最寒地である、北海道北部の幌加内町母子里周辺において、局地植物多様性を調査を企画した。ツンドラの調査において、寒地における狭い範囲(1-10平方メートル)の植物多様性(種密度)が温帯草原や森林林縁よりも高い事実をふまえ、日本の最寒地における北海道北部の局所植物多様性を数地点において比較することから、局所植物多様性が成立する要因解明を目的とした。
  
研究内容・成果 2001年の調査は初春(4月)、夏2回(7月と8月)行われた。初春は積雪のある時期に場所選定を行った。なだれが起こりやすい草原斜面とダケカバの優占するササ型林床を選択した。夏2回の調査において、ダケカバ森林と林のない草原で比較を行ったところ、斜面では10平方メートルあたり大型草本など約20種、ササ型林床では約10種の植物が確認できた。
 斜面草原の比較研究を計画したが、ササが深く調査地点へ到達できなかった。そこで、2.5年前に高橋・植村・原が設置した、ササ刈り取りあとの50mx50m方形区とササ原および林道沿いの3地点の局所植物多様性の比較を行った。その結果、ササ原では100平方メートルあたり11種、ササ刈り取りあとでは26種の植物が確認できた。ベルトトランセクトを1mx25m準備して、3地点の比較を行うと、ササ原では11種、ササ刈り取りあとでは33種、林道沿いでは42種の植物が確認できた。種数面積曲線のパターンはササ原と林道沿いでは1mx10mでほぼ飽和状態をしめしたが、ササ刈り取りあとでは1mx25mでも飽和はしていなかった。
 これらのことから、積雪寒地において、なだれなどによる斜面草原が林床より局地植物多様性がたかいことが、ササなどの林床を優占する植物種が欠落することと関連する可能性が示された。地表面が凍結融解し季節的に動くことや貧栄養ゆえ卓越する植物種が育たないと予想されるツンドラ植生の高い種密度と、今回の予備調査で得られたササ刈り取りによる局所植物多様性の高まりには、光や土壌栄養をめぐる植物間の競争の存在が示唆された。
 同じ地形における林床と林縁における局所植物多様性ならびに空間配置の精査が待たれる。(シメキリ期限を4月31日と思い違いしてました。陳謝:佐藤文責)