共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
パタゴニア氷原の質量収支の検討-3 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 助教授 |
研究代表者/氏名 | 成瀬廉二 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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幸島司郎 | 東工大 | 助教授 |
02 | 安仁屋政武 | 筑波大 | 教授 |
03 | 松元高峰 | 北大 | DC院生 |
04 | 山口悟 | 北大 | DC院生 |
05 | 松岡健一 | 北大 | DC院生 |
06 | 白岩孝行 | 北大 | 助手 |
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研究目的 | 南米南部のパタゴニア氷原は、中緯度温暖地域に存在するため地球温暖化による影響を敏感に受け、氷河の縮小が海面上昇に果たす役割は大きいことが指摘されている。しかしながら、現在のパタゴニア氷原の質量収支に関する知見は非常に少ない。本研究では、1999年に南パタゴニアのチンダル氷河涵養域(標高1760m)で掘削された深さ47mの雪氷コアの構造、安定同位体、化学成分、含有微生物等の分析結果を総合的に比較・検討し、過去数年間の年正味涵養量を見積もる。さらに、ペリート・モレノ氷河末端部の写真測量(1999年)の解析から、氷河末端の流動およびカービング速度の見積もり等を行う。 |
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研究内容・成果 | 本共同研究の3ヵ年の研究成果は、以下の通りである。 1999年12月、南パタゴニア・チンダル氷河涵養域の源流部にて深さ47 mの掘削を実施し、日本国内にて雪氷コア試料の酸素・水素同体比、無機イオン濃度、バイオマスの分析を行った。以上の結果、同地点の年涵養量(水当量)は、1998-1999の収支年では17.8 m/yr、1999-2000年では11 m/yr以上という、世界有数の高い降雪量であることが分かった。 一方、南パタゴニア・ペリートモレノ氷河において、1999年12月氷河末端部のカービング(氷崩壊)と流動速度の観測を行った(1.5-2.5 m/day)。また、同氷河やウプサラ氷河において、カ-ビング速度が水深の一次式で表される経験式を導いた。この結果はカービング過程を氷河モデルに組み込むときに有用となる。さらにウプサラ氷河の変動のメカニズムについて、氷河底面の突起地形と流動方向の伸張が大きな役割を果たしていることが分かった。 また、北パタゴニア・ソレール氷河にて、気候変化にともなう氷河の応答を数値実験した結果、気温が0.5度C上昇するとそれに応じた氷河形態に収束するまでには約150年要することが分った。 平成10-11年度科研費・国際学術研究「南米・パタゴニア地域における完新世の氷河変動と近年の氷河変動機構の解明」、および11-12年度科研費・基盤研究(C)「地球温暖化にともなう大規模な温暖氷河の後退が海水面変動におよぼす影響評価」による研究成果と合わせ、以下の論文を発表した。 Naruse, R. and Skvarca, P. (2000): Dynamic features of thinning and retreating Glaciar Upsala, a lacustrine calving glacier in southern Patagonia. Arctic, Antarctic, and Alpine Research, Vol. 32, No.4, 485-491. Naruse, R., Yamaguchi, S., Aniya, M., Matsumoto, T. and Ohno, H. (2000): Recent thinning of Soler Glacier, northern Patagonia, South America. Data of Glaciological Studies, Institute of Geography, Russian Academy of Sciences, Moscow, Publication 89, 150-155. Aniya, M. and Naruse, R. (2001): Overview of glaciological research project in Patagonia in 1998 and 1999: Holocene glacier variations and their mechanisms. Bulletin of Glaciological Research, 18, 71-78. Skvarca, P., Angelis, H. De, Naruse, R., Warren, C.R. and Aniya, M.: Calving rates in freshwater: new data from southern Patagonia. Annals of Glaciology, 34 (in press). Shiraiwa, T., Kohshima, S., Uemura, R., Yoshida, N., Matoba, S., Uetake, J. and Godoi, M.A.: High net accumulation rates at the Southern Patagonia Icefield revealed by analysis of a 45.97-m-long ice core. Annals of Glaciology, 35 (in press). |
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