共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
結晶核の発生の待ち時間と成長速度に及ぼす結晶核の影響 |
研究代表者/所属 | 東京農工大学 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 松岡正邦 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
01 |
滝山博志 | 東京農工大学 | 講師 |
02 | 内田博久 | 東京農工大学 | 助手 |
03 | |||
04 | |||
05 | |||
06 | |||
07 | |||
08 | |||
09 | |||
10 | |||
11 | |||
12 | |||
13 | |||
14 | |||
15 | |||
16 | |||
17 | |||
18 | |||
19 | |||
20 | |||
21 | |||
22 | |||
23 | |||
24 | |||
25 | |||
26 | |||
27 | |||
28 | |||
29
|
|||
30 | |||
31 | |||
32 | |||
33 | |||
34 | |||
35 | |||
36 | |||
37 | |||
38 | |||
39 | |||
40 | |||
41 | |||
42 | |||
43 | |||
44 | |||
45 | |||
46 | |||
47 | |||
48 | |||
49 | |||
50 | |||
51 | |||
52 | |||
53 | |||
54 | |||
55 |
研究目的 | 清澄な過飽和溶液中での単一結晶の成長速度は、微結晶が存在すると促進されることが知られている。研究代表者らは反応晶析法あるいは高温過飽和溶液添加法によって結晶核を発生させ、発生した結晶核が結晶成長の促進現象に果たす役割について検討してきている。その研究過程で結晶核がマクロな成長単位として結晶成長に直接作用していることを予測した。しかし、発生させた結晶核の大きさについては直接測定できていない。そこで、本研究では低温科学研究所に設備されているダイナミック光散乱光度計を用いて温度および発生条件の制御下のもと、結晶核を発生させ、理論から予測した結晶核の大きさと測定値とを比較することを目的とした。 |
研究内容・成果 | (1)研究方法 実験系として、その物性値が比較的知られている塩化ナトリウム-水系を用いた。実験は塩化ナトリウムのわずかに過飽和な高粘度溶液を調整し、そこに高温の塩化ナトリウムを添加することで結晶核を発生させた。ただちにダイナミック光散乱光度計(DLS-7000series:大塚電子株式会社製)にサンプルをセットすることで結晶核の発生の様子を粒径分布とともに測定した。 26℃塩化ナトリウム飽和水溶液(以下A液)を作成し、その後溶液中に存在する異質物と残った試薬を取り除くために0.45micronメンブランフィルターで吸引ろ過した。30℃飽和溶液(以下B液)も同様に作成し、これらの溶液を実験に用いた。 次にスクロール約30%の溶液を作成した。その溶液に過剰になるまで塩化ナトリウムを加え、スクロース―塩化ナトリウム―水の三成分溶液(以下C液)を調製した。この三成分の三角相図をFig.1に示した。この組成の溶液は粘度が高く約2.6674cpと見積もった。これを用いることで核化した塩化ナトリウムは、測定(約15分)中に沈降せずに測定できる。 実験は、始めに動的光散乱装置の測定用セルにC液を約2mlいれた。その後A液とB液をそれぞれ4mlと0.4mlをマグネティクスターラーで混合し、所定時間後にセル内に添加し軽く攪拌後に粒径を測定した。また測定温度は25℃、照射レーザーはHe-Neレーザーを用いた。 (2)研究結果と考察 A液とB液を4mlと0.4mlで混合し、10秒間攪拌した場合は測定中に光の散乱が観察された。測定後解析したところ平均粒径(重量換算)は1.55micronであった(Fig.2)。また個数基準の平均粒径は1.41micronであった(Fig.3)。このとき用いた2液の濃度から求めた25℃での臨界径は1.95micronである。実測値と予測値とはほぼ一致していることがわかる。このことから、理論的に結晶核の大きさを算出するときに塩化ナトリムの界面張力が必要となるが、界面張力の値については複数報告されている場合があり、今回の実験では、どの値を信頼するかについても指針が得られたことになる。この時に用いた界面エネルギーの値は38mJ/m2であった。 (3)まとめ 濃度の異なる塩化ナトリウム飽和溶液を混合することで、過飽和状態になり核が発生することがわかった。また発生する核の数も多いということが示唆された。2液を混合し10秒間攪拌した溶液は、平均粒径1.5micron前後の核が生じていることがわかった。粘度の高い溶液中であれば、核の大きさ付近の結晶も測定可能であることがわかった。実験系が一つであるが、発生した核の大きさを実測でき、予測値と比較できたことにより、信頼性のある界面張力の値を用いた結晶成長のモデル化およびシミュレーションが可能となった。 |