共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
植物の寒冷環境適応機構に関する研究 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 助手 |
研究代表者/氏名 | 荒川圭太 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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竹澤大輔 | 北大低温研 | 助手 |
02 | 長尾学 | 北大低温研 | 研究生 |
03 | 遠藤千絵 | 北海道農業研究センター畑作研究部 | 主任研究官 |
04 | 藤川清三 | 北大農学研究科 | 教授 |
05 | 黒田克史 | 北大農学研究科 | 研究生 |
06 | 宇梶徳史 | 生研機構(北大農学研究科) | 派遣研究員 |
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研究目的 | 植物の耐寒性は様々な形質に起因している。各形質がどのようなメカニズムでもってどの程度耐寒性に寄与しているかという点に関する知見は十分でなく、未だに不明な点が多く残されている。そこで本研究計画では、植物の寒冷環境への適応機構や寒冷環境に起因する環境ストレスに対する応答機構を解析し、耐寒性関連因子の生理的な役割を明らかにすることを主たる目的とした。平成13年度は、昨年度に引き続き、低温馴化やアブシジン酸処理によって耐凍性が誘導される過程で生じる生理的変化について解析をおこなうと共に、単離した低温誘導性遺伝子の機能解析を開始した。 |
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研究内容・成果 | 本年度の研究では、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L.)やヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)などを用いて、凍結ストレスに対する応答機構について解析をおこなった。シロイヌナズナを用いた実験系では、長期凍結処理によって発生する凍結傷害様式の特徴を明らかにするために、耐凍性試験やフリーズフラクチャー電子顕微鏡法によって細胞の微細構造変化を分析した。 未処理のシロイヌナズナの緑葉を-1度、-2度、-4度の温度で一定期間凍結処理をおこなった。試料を緩速融解した後、細胞の生存率を電解質漏出法によって測定したところ、いずれの凍結処理でも経時的に生存率が低下していた。-1度、-2度で凍結処理した試料では、平衡凍結直後に緩速融解しても50%を上回る高い生存率を示したが、-1度で7日間または-2度で2日間の凍結処理では生存率は10%以下に下がった。一方、連続光の下、+2度で2日間低温馴化した試料を用いると、同様の処理を施しても組織の凍結傷害率は軽減されていた。次に、凍結時の細胞の微細構造をフリーズフラクチャー電子顕微鏡法によって観察した。未馴化のシロイロイヌナズナ緑葉を-2度で平衡凍結した直後に急速凍結固定して細胞の微細構造を観察すると、細胞膜では膜内粒子(intramembrane particles)の欠如部位(aparticulate domains)やフラクチャージャンプ傷害(fracture-jump lesions)が観察された。-2度での凍結時間が長くなると膜内粒子の凝集が進み、膜内粒子の欠如部位が広がる傾向が見られた。また、この細胞にとって致死的な凍結温度(-6度以下)で処理すると、平衡凍結直後の細胞膜では膜内粒子の欠如部位やフラクチャージャンプ傷害が観察され、凍結時間が長くなると細胞膜上での膜内粒子の凝集が極度に進み、欠除部位が観察した膜面の60-80%にも及ぶ例も多く見い出された。 以上の結果から、長期間の凍結処理による凍結傷害発生機構では、通説通りに細胞外凍結により植物細胞が脱水収縮、変形することによって生じる生体膜間の相互作用が細胞膜の不可逆的な微細構造変化を引き起こすだけでなく、他の要因も凍結傷害を増長する可能性が考えられた。 今後も本研究を継続し、低温誘導性遺伝子の機能解析や凍結傷害発生機構の解明などを試みていきたい。 |
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